数年前に、自分の子供に『悪魔』という名前をつけようとした人のことがマスコミで報じられて、多くの人々を驚かせましたが、聖書の中に、「彼は苦しみをつくる」という意味の名前をつけられた人物がいます。その名前とは、「ヤベツ」です。

 「ヤベツは彼の兄弟たちよりも重んじられた。彼の母は、『私が悲しみのうちにこの子を産んだから』と言って、彼にヤベツという名をつけた。(第一歴代誌四章九節)。

 大変なお産だったのでしょう。ヤベツの母親は、余りにも苦しい思いをしたので、そのことが絶対に忘れられないように、ヤベツという名前を考え出したと思われます。私たち人間は、何かの苦しみを経験する時に、どうしても、自分の気持ちを周りの人間に理解してほしいという強い願望を持ちます。「私があなたのために、どれだけ苦労しているかを覚えておきなさいよ」と、発言をしたり、振る舞ったりするのですが、自分の苦しい気持ちのことで頭が一杯になっているので、自分の言葉や行動が周りの人間にどういう影響を与えているかを考えないのです。ヤベツの母親も、とにかく自分が苦しかったということが永遠に覚えられるように、子供に「ヤベツ」という名前を付けた訳ですが、後で、後悔したことでしょう。

 しかし、物心が付いて、自分の名前の意味を知ったヤベツは、少なからず、ショックを受けたはずです。そして、恐らく、こう考えたに違いありません。

 「僕は苦しみをつくる者だ。僕には、どんな希望があるのだろうか。どんな一生になるのだろうか。きっと、苦しいことばかりだろう。」

 結局、ヤベツは、生まれた時から、その運命が定められていたような、人生のレールが既に敷かれていたような人間でした。これは、現代社会の中でも、よくあることです。「あなたはこういう者だ」とレッテルを張られることがあります。あるいは、「あなたにはたいした能力などない」と評価されることもあります。残念ながら、ほとんどの人は、張られたレッテルを剥がそうとせず、人から言われた言葉をそのまま信じてしまうのです。また、直接、人から言われなくても、自分で自分の人生の行方を決め付けてしまうこともあるでしょう。

 「私はこういう状況の中で育ったから、こういう性格であるのは仕方がない。こういう生き方しかできないのは仕方がない。たいした知識も経験もないから、この程度のことしかできなくて当たり前だ」と、諦めてしまうのです。

 ヤベツも、初めは、定められていた運命の前で、諦めるしかないと思ったことでしょう。しかし、彼はある時から、真の神を求めるようになり、考え方ががらっと変わりました。神の力によって、自分の人生を変えることができる、と考えるようになったのです。ヤベツは決して、自分に与えられた運命を受け入れませんでした。本来ならば、苦しみの人生を歩むことになるはずでしたが、彼は大いなる祝福や繁栄の人生を求めました。

 「ヤベツはイスラエルの神に呼ばわって言った。『私を大いに祝福し、私の地境を広げてくださいますように。御手が私とともにあり、わざわいから遠ざけて私が苦しむことのないようにしてくださいますように。』そこで神は彼の願ったことをかなえられた」(十節)。

 こうして、ヤベツは祈りによって、自分の宿命を祝福に変えてしまいました。あなたも、同じようにできるはずです。

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