『あらしのよるに』(木村裕一著、講談社)という絵本をご存じでしょうか。十年ほど前から爆発的な人気を呼び、既に多くの賞を受賞している児童書ですが、世界中の子供に読まれたら、戦争の数が激減するのではないかと思えてなりません。

 あるヤギが嵐に遭って、誰も住んでいない小屋に避難します。嵐が止むのを待っていると、誰かが小屋の中に入って来ます。それが実は、ヤギの天敵である狼なのですが、暗くて、お互いの顔が見えません。おまけに、どちらも風邪をひいていて、匂いが分かりません。ヤギは、相手もヤギだと思って、声をかけます。

 「すごい嵐ですね。でも、あなたが来てくれて、ほっとしましたよ。」

 狼のほうも、相手がヤギだとは気付かない。狼の声を聞いて、ヤギは思わず、「狼みたいなすごみのある、低い声ですね」と言いかけたが、失礼だと思い、口を閉じる。狼のほうも、「まるでヤギみたいな甲高い声だなー」と言おうとしたが、そんなことを言ったら相手が気を悪くすると思い、止めることにする。

 とにかく、色々と会話をしているうちに親しくなります。お互いに幾つもの共通 点があることに気付きます。「わたしたちは、本当によく似ていますね」とヤギが言うと、狼が、「真っ暗でお互いの顔も見えないけれども、実は顔まで似てたりして」という台詞もあります。その時、すぐ近くで、稲妻が光り、小屋の中が昼間のように映し出されましたが、ヤギが下を向いていたし、狼もまぶしくて目をつぶっていたので、お互いの顔を見ていません。次の瞬間、大きな雷の音が、小屋中を震わせます。思わず、二匹はしっかりと体を寄せ合ってしまうのです。しかし、それでも分かりません。やがて嵐が止み、それぞれ自分の家に帰るのですが、その前に、次の日に会う約束をします。「でも、お互いの顔が分からないから、どうしよう」という話になるのですが、そこで念のために、会った時に「嵐の夜に友達になったものです」という合言葉を使おうということになるのです。とても考えさせられる話です。

 私たち人間は、よく知りもしないのに、他の国の人々に対して偏見を持ったり、毛嫌いしたり、必要以上に警戒したりするのではないでしょうか。しかし、何の偏見もなく、付き合ってみると、自分と差ほど違わない、とても良い人だということに気付くのではないかと思うのです。

 「もし、ほんとうにあなたがたが、聖書に従って、『あなたの隣人を自分と同じように愛せよ』という最高の律法を守るなら、あなたがたの行ないはりっぱです。しかし、もし人をえこひいきするなら、あなたがたは罪を犯しており、律法によって違反者として責められます」(ヤコブ2章8−9節)。

 世界情勢は日ごとに、緊張感を増しています。いつ戦争が勃発してもおかしくない状況ですが、実際に戦争になった場合、数百万人もの犠牲者が出ると予測されます。今こそ、「あなたの隣人を自分と同じように愛せよ」という戒めを真剣に受け止めて、実践すべき時です。あなたの周りにも、愛すべき人はいないでしょうか。

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