1970年代、クリスチャンで心理学者でもあるフィル・ハリスという人が、“I'm ok, you're ok”という本を書きました。ハリス師は、この“I'm ok, you're ok”と言えるようになった人こそ、大人としての成長を遂げた人だと言っていますが、そこに到達するまで、私たちは幾つかの段階を経なければなりません。

 生まれたばかりの赤ちゃんは自分のことも、周りの人間のこともよく思っていません。まず、自分の今の状態に対して、不満が一杯あります。度々、空腹を覚える。おむつが汚れて、気持ち悪い。自由に身動きが出来ない。また、「ぎゃー」と泣いても、周りの人がすぐには面 倒を見てくれないことがある。こちらのニーズを正確に把握してくれないこともある。赤ちゃんはとにかく、自己中心です。夜中であろうと、何時であろうと、大人の都合を全く考えないで、要求をするばかりです。まさに、“I'm not ok, you're not ok”です。

 しかし、1−2年経つと、子供は少しずつ、自分で色々なことができるようになります。好奇心旺盛で、色々なことに挑戦します。トイレの水で遊んだり、食器戸棚のものを全部出して散らかしたりする訳ですが、本人は楽しくやっています。ところが、大人たちが「やめなさい。何やってるの」と怒ります。これは、“I'm ok, you're not ok”という成長段階です。

 また、十代になると、自信がなくなり、周りの友達のほうがルックスが良かったり、頭が良かったりするように思えてきます。これは、“I'm not ok, you're ok”ということです。しかし、その十代の子供が周りから愛情を注がれ、励ましを受けると、更に成長して、ついに、“I'm ok, you're ok"と言えるようになる、というのです。「私も大切な存在だし、あなたも大切な存在です」と言える人は、健全な心を持っています。

 これはあくまでも心理学の話ですが、聖書とも一致しています。聖書の大切な命令は、「神を愛し、人を愛せよ」ですが、どのように人を愛すべきですか。自分と同じように、です(マルコ12・31)。つまり、「私はokです」と言えなければ、人を愛することなど、とても困難です。しかし、今、自分のことをokだと言える人は、どれくらいいるのでしょうか。ほとんどの人は劣等感があったり、自尊心が低かったり、セルフ・イメージが悪かったりして、自分のことをokだとは思っていないのです。

 聖書の中に、「私はokです」と言える確かな根拠があります。人間は神の姿に似せて造られた者で、神の作品です。ですから、神にとっては、とても貴重な存在になる訳ですが、私たちは罪を犯してしまいました。たとえで言うなら、それは奇麗な絵に泥を塗ってしまうようなことです。絵に泥を塗ってしまうと、画家の画いた絵が見えなくなってしまいますが、そこで画家にとって絵の価値がなくなる訳ではありません。その絵を掃除して、元の姿に戻す技術を持っているなら、です。私たちは神の作品に泥を塗って、それを駄 目にしてしまっています。そこで、自分の罪に気付く時、“I'm not ok"ということになりますが、神が救いの招きをしてくださいます。

 「あなたはそれでも、私の作品です。貴重な存在です。私のところにいらっしゃい。その泥を落とし、元どおりの姿にしてあげよう。」

 これが福音です。


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