「これらの人々はみな、信仰の人々として死にました。約束のものを手に入れることはありませんでしたが、はるかにそれを見て喜び迎え、地上では旅人であり寄留者であることを告白していたのです。彼らはこのように言うことによって、自分の故郷を求めていることを示しています。もし、出て来た故郷のことを思っていたのであれば、帰る機会はあったでしょう。しかし、事実、彼らは、さらにすぐれた故郷、すなわち天の故郷にあこがれていたのです。それゆえ、神は彼らの神と呼ばれることを恥となさいませんでした。事実、神は彼らのために都を用意しておられました」(ヘブル書11章13−16節)。

 20世紀の初め頃の話ですが、ある有名な伝道者がニューヨークから舟に乗って、ヨーロッパに行きました。そして、ヨーロッパの各都市で伝道集会を持ったのですが、その一つ一つが素晴しく祝福されて、多くの人々が救われました。いよいよ、集会のスケジュールを終えて、アメリカに帰ることになりましたが、舟の中で、伝道者は考えました。

 「ニューヨークのクリスチャンたちはヨーロッパの集会のうわさを聞いているだろうから、きっと港まで迎えに来てくれるだろう。」

 港に着くと、大勢の人々が集まっていました。ブラス・バンドの人たちもいました。皆、手を振ったり、大きな声で叫んだりしています。伝道者は思っていた以上の出迎えに、感動しました。しかし、次第に、この人々が自分を迎えに来たのではないということに気が付きました。たまたま、アフリカの狩猟旅行から帰る、ルーズベルト元大統領が同じ舟に乗っていたのです。

 がっかりした伝道者は、電車に乗り換えました。そして、電車の中で、彼は思いました。 「教会の人たちはきっと、駅まで迎えに来てくれるだろう。そうだ。みんな、駅で待っているに違いない。」  駅に着いてみると、やはり、沢山の人々が集まっていました。ブラス・バンドの人たちも並んでいました。ところが、分からなかったのは伝道者ばかりで、また大統領が同じ電車に乗っていて、同じ駅で降りることになっていました。そうです。人々はルーズベルト元大統領を迎えに来ていたのです。

 伝道者は一人で、自分の家に向かって、歩き始めました。重い荷物を持って、既に暗くなっていた町の中を歩きながら、彼は祈りました。

 「神様、これは不公平ではありませんか。人々は狩猟旅行から帰った大統領のために大勢で迎えに来るのに、主の御用のためにヨーロッパまで行って来た私を迎える人は一人もいません。故郷に帰っても、何の出迎えもないのは、寂しすぎるのではありませんか。」

 こうして泣きながら祈っていると、聖霊の声が、彼の心に響きました。

 「我が子よ、あなたはまだ、自分の故郷に帰ってはいない。」

 そうです。私たちはまだ、故郷に帰っていません。私たちの故郷は、天国です。この世にあっては、私たちを迎えに来てくれる人はいないかも知れません。私たちの労は報われないかも知れません。しかし、それは天に帰るまでの話です。天の故郷に帰ったら、私たちは主からのねぎらいの言葉をかけていただけるでしょう。豊かな報いがいただけるでしょう。

 「あなたがたは心を騒がしてはなりません。・・・・あなたがたのために、わたしは場所を備えに行くのです」(ヨハネ14章1−2節)。



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