巣鴨拘置所で、スミス宣教師から福音を聞き、キリストを信じた西沢さんは、自分の罪がキリストの十字架の血潮によって赦された喜びを、他の戦犯たちに伝え始めました。その中の一人に柴野さんという人がいました。彼は西沢さんの証しを聞いて言いました。

 「私も救われたい。私も避けられない死を前にして永遠の命が欲しい。罪が赦されるということを経験したい。」

 そこで、柴野さんは、あと一回しか残っていない家族との面会のチャンスをスミス宣教師に充てました。30分の面会の中で福音を聞いて、彼も素直にキリストを信じ、救われました。 後日、またGHQ占領軍のほうから、スミス師のところに連絡が来ました。今度は、柴野さんが所内で救いの喜びを伝え始めた別の戦犯が面会を求めている、というのです。こうして、巣鴨拘置所の中で次々と戦犯たちがキリストに導かれ、結局、14人も救われたのです。

 自責や怒り、不当さに対する憎しみが渦巻く巣鴨拘置所でしたが、クリスチャンになった人々は輝いていました。彼らの証しによって、巣鴨の雰囲気が一変しました。その情報を耳にしたマッカーサー司令官は、もう一度、西沢に会っても良いという特別許可をスミス師に与えました。この最後の面会の時、西沢さんは自分のことよりも、家族のことを心配していました。 「私の今の心残りは、家族でまだ救われていない者がいることです。彼らのために、どうぞ、この福音を伝えてあげてください。」

 スミス宣教師と西沢さんは二人で祈りました。その時、二人をじっと見張っていた看守はヘルメットを脱いで、自らも深々と頭を下げながら祈りました。そのことに気付いたスミス師は、「あなたもクリスチャンですか」と尋ねました。すると、彼は言いました。

 「いいえ、小さい時から日曜学校に通っていましたが、神から離れてしまいました。今は信仰を持っていません。しかし、ここで次々と絶望の囚人たちが輝くようになっていくのを見て、私も信じたい気持ちになりました。」

 この看守の回心がきっかけとなって、憲兵隊のための聖書研究会が開かれるようになりました。その中でまた沢山の憲兵隊が救われ、宣教師になった人もいます。
 有罪判決を受けた西沢さんと柴野さんは、やがて、処刑されることになりました。その翌日に、ある将校が報告をしに、スミス宣教師のところに行きました。 「昨日、あなたが導いた戦犯たちが処刑されました。その最後は、みんなに賛美歌を歌ってもらい、『神が共におられる。死ぬのではなく、故郷へ帰る』と言って、聖書を抱き抱えながら死んでいきました。」

 東京裁判は、不当な裁判だったと言えるかも知れません。しかし、その中で、神の驚くべきみわざが現されました。

 兄弟に裏切られて、奴隷としてエジプトに売り飛ばされたヨセフは、様々な苦しい経験を経て後、エジプトの総理大臣になります。その後、兄弟たちとの再会を果たした時、自分の信仰を次のように語っています。

 「あなたがたは、私に悪を計りましたが、神はそれを、良いことのための計らいとなさいました」(創世記50章20節)。 聖書の神は、人間の不正や不当の中にも働いてくださるお方です。あなたも、この方に人生を委ねてみませんか。

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