「ホロコースト」という言葉を聞くと、誰もがナチス・ドイツで虐殺された六百万人のユダヤ人の悲劇を思い起こすことでしょう。また、「二度と同じ過ちを繰り返してはならない」という認識も、世界中のほとんどの人々が持っていると言えると思います。

 しかし、そのような共通の認識があるにもかかわらず、実際のところ、アメリカやヨーロッパ、また日本においても、毎年、何百万人もの罪のない人間の尊い命が、情け容赦もなく奪われています。それも、各国の法律が認めている、「中絶」という方法によってです。現在、日本の医師が厚生労働省に、中絶を行なったという報告を出すのは、約30−40万件だそうです。しかし、これは届け出の数で、未届け出のものも合わせると、最低三百万件にはなると推測されています。一日に約8000人、10秒に一人の赤ちゃんが殺されている、という計算になります。

 日本は1948年、世界で初めて「優生保護法」(赤ちゃんを殺しても良い)という法律を作りました。最初は、「日本が殺人法を制定した」ということで、批判が集まりましたが、やがて世界のほとんどの国が同様の法律を作るようになりました。

 クライスト・フォー・ザ・ネイションズ聖書学院(北海道石狩市)2007年11月号のニュース・レターの中で、辻岡健象師は、中絶を行なっていた、ある産婦人科医の話を紹介しています。その医師は、ある時、イエス・キリストのみことばを聞くチャンスに恵まれました。「最も小さい者にしたのは、わたしにしたのと同じである」という聖句です。その時、最も小さい者とは誰かと考えました。大人と子供を比べれば、子供のほうが小さい。また、子供の中で最も小さいのは赤ちゃんである。赤ちゃんの中でも、お腹の中の赤ちゃんがより小さい。更に、お腹の中の赤ちゃんの中でも、最も小さいのが中絶されていく赤ちゃんではないか、という結論にたどり着きました。それまで、何千何万人もの赤ちゃんを中絶してきた医師ですが、キリストのみことばを聞いて小さなイエス様を殺してきたことを悔い改め、今度は、赤ちゃんの命を守る側に回ると言ったということです。

 日本における中絶の原因の99パーセントは経済的な理由であると言われます。実に、理解に苦しむ話です。日本は豊かな国です。人々は高価な車を乗り回したり、海外旅行をしたり、エステをしたり、ブランド品を買い集めたりするお金を持っています。しかし、一人の人間の尊い命を守り、育てるお金がない、というのです。次の聖書箇所が、そのまま、現代人に当てはまるのではないでしょうか。

 「終わりの日には困難な時代がやって来ることをよく承知しておきなさい。そのときに人々は、自分を愛する者、金を愛する者、大言壮語する者、不遜な者、神をけがす者、両親に従わない者、感謝することを知らない者、汚れた者になり、情け知らずの者、和解しない者、そしる者、節制のない者、粗暴な者、善を好まない者になり、裏切る者、向こう見ずな者、慢心する者、神よりも快楽を愛する者になり、見えるところは敬虔であっても、その実を否定する者になるからです」(テモテ三章一−五節)。

 十字架上のキリストと共に、「父よ。彼らをお赦しください。彼らは、何をしているのか自分でわからないのです」と祈らずにはいられません。

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